【片目失明の義眼は対象外!?】補装具費支給制度で助成されない理由を徹底解説

制度と暮らし

片目を失った人は、日常生活の中で見た目の変化や心理的負担を抱えながら生活しています。

その負担を少しでも軽くするために必要となるのが「義眼」です。

しかし、義眼は補装具として制度に位置づけられているにもかかわらず、片目失明者は補装具費支給制度の対象外となり、すべて自己負担を強いられています。

(詳しくは「【義眼の作成費用はどのくらい?】」を参照)

  • なぜ、必要な補装具であるはずの義眼が支援の対象にならないのか。
  • なぜ、片目失明は「障害」として扱われないのか。

この記事では、厚生労働省の資料や法令などをもとに、義眼と補装具費支給制度の“構造的な矛盾” を丁寧に紐解いていきます。

補装具費支給制度の概要

制度の目的・概要

補装具費支給制度は、以下を目的として実施される。

  • 障害者が日常生活を送るうえで必要な移動の確保
  • 就労場面での能率向上
  • 障害児が将来、社会人として自立するための基盤づくり

これらを達成するために、身体の欠損や損なわれた身体機能を補完・代替する補装具について、購入・修理にかかる費用の一部を公費で支給する。

支給額は次の計算式で決まる。

  • 基準額(同一月に購入・修理した補装具の合計額)
  • そこから「利用者負担額(原則1割)」を控除した額が補装具費となる
  • ただし、利用者負担額は政令で定める額(37,200円)を上限とする
  • 市町村民税非課税世帯は上限0円

対象者

  • 補装具を必要とする”障害者”
  • 障害児
  • 難病患者(政令で定める疾病に限る)
ばっしー
ばっしー

対象者に「障害者手帳」の有無の記載はありません。

障害者の定義を調べる必要がありそうですね…

実施主体

  • 市町村(自治体)が実施する。

申請方法

  • 障害者または障害児の保護者が、市町村長へ申請する。
  • 身体障害者更生相談所などの判定・意見を踏まえ、市町村長が支給の可否を決定する。

費用負担の仕組み

公費負担

補装具費(=基準額 − 利用者負担額)を、以下の割合で公費負担する。

  • 国:50%
  • 都道府県:25%
  • 市町村:25%

利用者負担

  • 原則1割負担
  • 世帯所得に応じて、月額の負担上限が設定されている。

所得区分と負担上限月額

  • 障害者または配偶者のうち、市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合、補装具費の支給対象外。
  • 生活保護への移行防止措置あり。

【重要】補装具費支給制度の法的根拠

  • 補装具費支給制度は、障害者総合支援法 第76条第1項に基づく
    • 補装具費支給制度の「障害者」
      • 障害者総合支援法に基づく
    • 障害者総合支援法の「身体障害者」
      • 身体障害者福祉法の定義を参照
    • 身体障害者福祉法の「身体障害者」
    • 身体障害者福祉法 第4条(身体障害者の定義)
    • 「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
ばっしー
ばっしー

つまり、補装具費支給制度の対象となる「障害者」とは、身体障害者福祉法 第4条(身体障害者の定義)に準じており、「障害者手帳の交付を受けたもの」ということになるわけですね。

身体障害者手帳の視覚障害について

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法(第15条)に定める身体上の障害がある人に対して、都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が交付します。

手帳の交付対象は、身体障害者福祉法別表(身体障害者福祉法施行規則 別表第5号「障害程度等級表」)に掲げる障害がある人で、いずれも「永続する障害」であることが条件となります。

視覚障害の程度(等級)は「1級〜6級」が設定されています。

級別視力障害視野障害
1級両眼の視力の和が0.01以下のもの
2級両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95パーセント以上のもの
3級両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90パーセント以上のもの
4級両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
5級両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
6級一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの
ばっしー
ばっしー

つまり、視力もしくは視野表の基準を満たす障害がある場合に交付されるというわけですね。

片目失明での義眼の費用が支給対象外となる理由

厚生労働省のHPに記載されている補装具費支給制度の概要には、対象者に「補装具を必要とする障害者」と記載されており、障害者手帳の有無については触れられていませんでした。

これを見た片目失明で義眼を必要とする人の中には、「制度を利用できるかもしれない」と考える人もいるでしょう。

しかし、補装具費支給制度の根拠を掘り下げていくと、身体障害者福祉法の「身体障害者=障害者手帳の交付を受けたもの」という記述にたどり着きます。

したがって、片目失明のみでは障害者手帳の交付が受けらず、補装具費支給制度の対象者である「障害者」に該当しないため、義眼の費用が助成されないという結果になります。

義眼の補装具費支給制度について感じた矛盾と問題点

【重要】義眼は視覚機能を補うものではない

補装具費支給制度の判断基準は障害者手帳の有無となっていますが、障害者手帳の交付基準は視覚機能で評価しています。

補装具一覧を見てみると、眼鏡や白杖など義眼以外の補装具は「失った視覚機能を補う」ものであり、その妥当性が理解できます。

一方で、義眼の主な役割は「見た目の改善」にあります。

補装具とは、身体の欠損や損なわれた身体機能を補完・代替するものであり、実際に補装具の一部に義眼も含まれています。

ばっしー
ばっしー

現行制度では、「見た目の改善」を主な役割とする義眼を補装具と認めながら、その判断基準を視覚機能で評価していることに矛盾を感じます。

片目失明で義眼を必要とする人はたくさんいる

片目失明での義眼作成については、ニュースや記事でも取り上げられています。

片目失明者の義眼助成について声を上げている議員さんもいます。

義眼の費用負担は大きいが、使用しないと精神的負担が増加。

私もそうですが、義眼ユーザーは見た目の影響から日常生活において精神的負担を伴います。

しかし、義眼の費用は高額で、金銭的な理由から購入に踏み切れない場合、見た目の問題による精神的負担に拍車がかかります。

厚生労働省は義眼の耐用年数を2年と定めており、仮に人生100年とすると、義眼は生涯で50回ほど作り替える計算になります。

1回あたり10〜20万円前後と考えると、生涯の自己負担は500万円〜1000万円近くになる可能性があります。

ばっしー
ばっしー

助成を受けられない片目失明の義眼ユーザーは「大きな金銭的負担」「大きな精神的負担」、人生でいずれかの大きな負担の選択を強いられていることを考えると心が痛みます。

解決策は?

補装具費支給制度の対象外となる義眼ユーザーの金銭的負担を軽減するには、法制度の改正をおいて他にないと考えます。

  • 補装具費支給制度の対象者の見直し
    • 義眼は視覚機能を補うものではないため、視覚機能ではない評価を適応する。
    • 「眼球を摘出した場合は対象」など、特例を追加する。
  • 身体障害者手帳の基準の見直し
  • 義眼をアピアランスケア助成制度で運用

片目失明の義眼の費用助成について声を上げている議員さんもいましたが、実際に支援制度が成立した地方自治体もありました。

ばっしー
ばっしー

これを機に、片目失明での義眼費用助成が拡大していくことを願っています。

まとめ

義眼は視覚機能を補うものではなく、見た目の改善に欠かせない補装具です。

それにもかかわらず、現行制度では視覚機能を基準とした身体障害者手帳の交付が支給判断に使われているため、片目失明者は制度の対象外となっています。

その結果、義眼を必要とする多くの人が、「高額な自己負担」か「見た目による精神的負担」か、
どちらかの大きな負担を選ばざるを得ない状況に置かれています。

一方で、川崎市のように義眼助成を始めた自治体も現れ、議員による問題提起も少しずつ増えています。

制度はゆっくりではありますが、確実に動き始めていると感じています。

片目失明者の義眼費用助成は、アピアランスケアの観点からも、社会参加の観点からも、これからの時代に必要な支援です。

この記事が、制度の矛盾に気づくきっかけとなり、より多くの人が安心して義眼を使える社会へとつながっていくことを願っています。

📚 引用文献

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