「網膜芽細胞腫の治療後は、どのくらい目が見えるのか。」
これは、同じ病気を経験した人や、その家族にとっても心配するところだと思います。
網膜芽細胞腫の治療後にどの程度の視力・視野が残るのかは、発症時期、腫瘍の位置、治療法、「片眼性」か「両眼性」かによって大きく異なるとされています。
この記録では、研究で示されてる網膜芽細胞腫で残される視覚と、私に残っている実際の視覚についてまとめました。
医療的な判断を示すものではありませんが、同じ境遇の方やご家族の方へ参考になれば幸いです。
網膜芽細胞腫の治療による視覚への影響
網膜芽細胞腫の生存率は9割以上と言われていますが、治療後の視力・眼の状態は成人以降まで影響します。
網膜芽細胞腫では、両眼性や眼球摘出の既往がある場合には、視力に関連する活動や精神的な負担を伴います。
視力の自己評価が良好である人がいる一方で、全盲である人も存在し、治療後の視覚が生活の質に大きく影響することが研究で示されています。
Friedman ら(2018)が、網膜芽細胞腫の既往を持つ470名の成人を対象に、視覚関連QOL(生活の質)を評価し、「片眼性」と「両眼性」では視機能の傾向が大きく異なることを研究で示しています。
- 片眼性
- 治療を受けていない側の視力が保たれることが多く、視覚関連QOLも比較的高い水準にある。
- 両眼性
- 腫瘍の位置や治療法の影響が両眼に及ぶため、視力・視野ともにばらつきが大きく、生活にも影響が残りやすいとされている。
また、放射線治療を受けた場合は視野欠損や網膜障害が長期的に残ることがある一方、化学療法中心の治療では視機能が比較的保たれやすい傾向が報告されています。
こうした文献の傾向から、治療後に残る視機能は、「片眼性」か「両眼性」か、そしてどの治療を受けたかによって大きく変わることがわかります。
以下は、Friedman ら(2018)のデータから、視覚に影響しうる治療歴のみを抜粋したものです。
| 片眼性(n=218) | 両眼性(n=252) | |
|---|---|---|
| 🟢放射線治療:あり | 34(/218) | 231(/252) |
| 🟢放射線治療:なし | 180 | 20 |
| 🟢放射線治療:不明 | 3 | 1 |
| 🟣化学療法:あり | 25 | 94 |
| 🟣化学療法:なし | 190 | 157 |
| 🟣化学療法:不明 | 2 | 1 |
| 🔴摘出:片眼 | 190(/218) | 160(/252) |
| 🔴摘出:両目 | 0(/218) | 54(/252) |
| 🔴摘出:無し | 21 | 33 |
| 🔴摘出:不明 | 7 | 5 |
📚 引用文献
私の視覚|治療後の視力・視野とその変化
私が網膜芽細胞腫の診断を受け、治療を開始したのは生後3か月でした。
(詳しくは「網膜芽細胞腫の治療と現在までの経過」を参照)
私は”両眼性”の網膜芽細胞腫で、「放射線治療」「化学療法」「片目摘出」を行っています。
私が受けた網膜芽細胞腫の治療を、Friedman ら(2018)の研究に照らし合わせると以下のようになります。
- 両眼性・摘出あり
- 視力に関連する活動や精神的な負担を伴いやすい
- 視力・視野ともにばらつきが大きく、生活にも影響が残りやすい
- 放射線治療:あり
- 視野欠損や網膜障害が長期的に残ることがある
- 化学療法:あり
- 視機能が比較的保たれやすい
私の場合は、化学療法中心というわけではありません。

こうして整理してみると、私が感じている”網膜芽細胞腫に伴うさまざまな辛さ”の一部が、文献の傾向と重なることに気づきました。
視力の状態
私は、右目を摘出(失明)しており、左目も治療の影響で白内障になったため、水晶体を摘出しています。
そのため、左目は無水晶体用のメガネ(度数が非常に強いレンズ)で矯正しており、遠近調節はできません。
左目の矯正視力は「0.5~0.9」と、体調や日によってばらつきがあります。
また、遠近調節ができないため、用途にあわせて複数のメガネを使い分けています。
- 自宅:「近く」に焦点をあわせたメガネ
- 外出時:「中間」に焦点をあわせたメガネ
- 「遠く」に焦点をあわせたメガネは、近くが極端に見づらいため、普段使いとしては不向きでした。
また、左目しか見えないため、遠近感がつかみにくいと感じることがあります。
視野の状態
右目は摘出しているため、視野はありません。
左目は、治療の影響で中心~内側下方にかけて広い範囲が見えていません。
そのほかにも、部分的に見えていない箇所があります。
また、常にメガネをかけて生活しているため、実際に使える視野はさらに狭くなります。
さらに、右側の状態が把握しづらいため、右側にいる人や物に気づけず、ぶつかってしまうことがあります。
そのため、人混みが苦手で、東京など人が多い場所に行くときには、「伸縮タイプの白杖」を持っていくこともあります。

左手で”グー”をつくって鼻に当て、右目をふさいでみると、私の視野に近い状態になります。
視覚の変化
📅 視覚の日内・日差変動
「視力の状態」でも少し触れましたが、体調や疲労感によって見え方が変わることがあります。
健常者でもそういったことはあると思いますが、私は残った左目の視機能だけで生活しているため、日々の変化が生活や仕事に影響することもあります。
また、左目にゴミやまつ毛が入ったり、目ヤニが出ると、一気に視界不良になってしまいます。
こうした視覚の変化は突然起こるため、予定どおりに作業が進まなかったり、難しくなることもあります。
⏳ 歳月による視覚の変化
幼少期のころは、検査が正確にできなかった可能性もあり、当時の矯正視力は「0.3~0.7」程度だったと記録されています。
視野検査については、大学生になるまで実施した記憶・記録がありません。
現在も定期的に眼底検査を受けていますが、幸いなことに、主治医から再発・手術痕の変化を指摘されたことはありません。
しかし、数年前に眼底検査で異常はなかったものの、一時的に左目の視力が「0.5」まで低下したことがありました。
原因がわからなかったため、「このまま視力が低下するのではないか?」と不安になった時期もあります。
おわりに|視覚機能を記録として残す意味
網膜芽細胞腫の治療は、命を守るために必要なものですが、その後に残る視力や視野の状態は人によって大きく異なります。
発症時期や腫瘍の位置、治療法、片眼性か両眼性か、さまざまな要素が複雑に重なり、ひとりひとり違う“見え方”があると思います。
私自身も、治療で残った視覚と向き合いながら、生活の中で戸惑ったり、不安を抱えたりしてきました。
こうして記録として言葉にしてみることで、自分の視覚の特徴や変化をあらためて整理できたように感じています。
網膜芽細胞腫の治療を受けた人の“見え方”は、数字だけでは語りきれないものがあります。
だからこそ、こうした個々の記録を残すことに意味があるのだと思います。

「わたしの声が、誰かの希望になる」ことを願っています。



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